インターネットの普及により、数年前に中国で生まれた「顔面偏差値」という言葉。
中国のユーチューバーである网红(ワンホン )の誕生や、容姿の美しい有名人たちがライブ配信をして人気を集めている中、顔面偏差値が高いと収入や就職・結婚などのライフイベントに有利という考えが若い世代を始めとし、より強まっています。
そのため、見た目にコンプレックスのある若者が増え、美しくなるためにエステや医療美容などにお金を使う若者が増えています。
今回は、中国の「顔面偏差値経済」の実態について、ご紹介していきます!
中国の顔面偏差値経済とは
「顔面偏差値経済」とは、美容を中心に発展した消費産業のことを指します。
生活水準の向上で中級階級層の消費がアップグレードしたこと、インターネット世代を筆頭に、写真や動画をSNSにアップすることが日常となり、外見に関わるファッションや美容、医療美容・フィットネスなどの消費が急速に伸びています。
このような流れにより、化粧品を使う年齢の低年齢化が進んできるのと、女性だけではなく男性もメイクやスキンケアをする時代になってきています。
外見が収入に影響する?
経営学者のダニエル・ハマーメッシュ氏とジェフ・ビドル氏の研究によると、外見が平均以下の人は時給が9%ほど少なく、外見が平均以上の人は時給が5%高く、それらには14%の差があるとしました。
また、外見によって生涯年収の差は2,700万円も違ってくるとも言っています。
中国のことわざにも「美しさを勝ち取るものは、人の心も勝ち取り、人々の心を勝ち取るものは世界をも勝ち取る」とあります。
中国では、网红(ワンホン )と呼ばれるネットインフルエンサーが生まれ、異常な収入を叩き出しています。
こうした背景から、「顔面偏差値が高い=人気や収入が高い」という考えを持つ若者が増え、自分の顔面偏差値を上げるための消費を惜しまないという傾向が見られます。
顔面偏差値経済で伸びる分野
「顔面偏差値経済」の恩恵を受ける分野は主に美容業界。
コスメやエステ・医療美容・フィットネスなど、中国で爆発的に伸びています!
メンズ美容
中国の男性用化粧品市場は、過去4年間で平均7.7%の成長率を示し、2020年の市場規模は約167億元でした。
2020年双11(ダブルイレブン)の「中国男性化粧品消費者状況」によると、Z世代以降の男性たちは、女性の2倍の速さでファンデーションを購入し、女性の4倍の速さでアイライナーを購入していることがわかりました。
若い世代の男性たちは、大学前後にスキンケアの習慣を身につけるのが一般的。
彼らは男性用スキンケア・メイクアップ商品の主要な消費者となっており、その割合は60%以上占めています。
これまで、化粧品を購入するのは常に女性消費者でしたが、「顔面偏差値経済」の影響もあり、男性美容に対する市場が右肩上がりで伸びており、より加速傾向です。
医療美容
近年、爆発的に伸びている中国の医療美容市場は、2021年では2,000億元を越え2022年には3,000億元に届く規模へと成長しています。
中高年はもちろん若い世代の中国人消費者たちは、アンチエイジングに対するニーズが強く、スキンケアの一貫として医療美容を受けています。
特に手術をする必要がなく、ダウンタイムが短いサーマクールやハイフなどの施術が人気です。
また、男性消費者が医療美容をケースも増えており、2020年中国白領消費行動研究報告によると、中高年男性の30%が医療美容を受けているということがわかりました。
男性が美容にお金を支払う意欲はとても高く、施術を受ける一回の平均価格は女性の2.75倍で、施術は、主にニキビ跡の治療、眉などのアートメイクです。
現在、中国のZ世代を中心に自分の容姿に満足していないコンプレックスを持っている人は8人に1人で、今後も美容医療の主要は伸びていくと予想されます。
キッズ用化粧品
幼い頃、母の口紅やマニキュアを勝手に使って叱られる…という私の世代とは異なり、現代の親は子供にメイクアップをさせることに抵抗を持たなくなりました。
中国メディアの報道によると、重慶市の5歳の少女は、口紅やアイシャドウなどのメイク商品に年間約1,000元以上を費やしていると言います。
ディズニーなどもキッズ用化粧品を押していたり、近年インターネットの普及により、子供向けのメイク動画も増えてきています。
中国でキッズ用化粧品を使用している数は5,000万人と言われ、50億元近くのシェアを持つと推定されます。
フィットネス
「顔面偏差値経済」は、顔面だけの美しさにとらわれるものではなく、健康やダイエット・フィットネスの領域にも渡ります。
フィットネスは医療美容とは異なり、ダイレクトに見た目を良くすることはできませんが、運動をすることによりスタイルが良くなり、普段の洋服をきれいに着こなすことが可能に。
また、2022年新型コロナウイルスによる上海ロックダウン期間中に爆発的に流行った「刘畊宏(リュウグンホン)」による筋トレライブ配信も相まり、フィットネスに関心を持つ人がどんどん増えています。
中国では「太っている人は威厳があり信頼ができる」という考え方がありましたが、「顔面偏差値経済」では引き締まった身体が生活に良い影響を与えると信じられ、フィットネスに通う人が増え続けています。
顔面偏差値はヒトだけに使われる言葉ではない?!
中国の颜值はヒトのみに使われる言葉ではなく、物や環境などの外見にも使われます。
颜值高(ヤンズガオ)とは、顔面偏差値が高いという意味ですが、家具やマスク、キッチン用具などのデザインにも使われます。
颜值高なマスク
新型コロナウイルス対策でマスク着用が一般的となった中国。
着用するならおしゃれなマスクをという人も増え、颜值高なマスクが登場しています。
このようなマカロンカラーのカラフルマスク。
旧正月仕様のマスク。
「顔面偏差値経済」では、マスクもファッションの一部として楽しむ人が増えています。
颜值高な家具
80〜90年代は、家具やインテリアは贅沢品で高価なものだったため、見た目の良さよりも機能性を重視するような考えを持つ人も多かった時代。
それとは反対に、現代の若い世代は家具やインテリアを購入する際に、まずは見た目の良し悪しを見てから、その後機能性を見るようになりました。
Z世代の人たちはインターネット時代に生まれ、膨大な情報を毎日受け取り、その中から独自の美的感覚を追求しています。
また、新型コロナウィルスの長期間のロックダウンも相まって、家での時間を快適に楽しみたいというニーズが増えたため、颜值高な家具の需要も高まっています。
「顔面偏差値経済」は、製品のデザイン性にのみ力を入れているように思いますが、見た目も機能性も両方兼ね揃えた製品を作るため、企業側に求められている要求がより高くなっていることは事実です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
近年、中国経済に多大な影響を及ぼしている「顔面偏差値」
Z世代をはじめとし、多くの人が見た目に気を使うようになり、化粧品や医療美容、フィットネスなどの美容市場は右肩上がりで発展しています。
また、顔面偏差値はヒトのみに使われる言葉ではなく、物や環境にも使われています。
中国の消費者は、自分自身が美しくなるだけではなく、自分を取り巻く物や環境にも美しさを求めるようになってきています。
そのため、中国の「顔面偏差値」に関わる市場は今後も伸び続けることが予想され、今後も中国の美容市場の発展に目が離せません。
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